透明なゆりかご/沖田×華

一時期ネットコミックの広告でよく見かけていた。

その時はとくに「読みたい」という積極的な気持ちは持っていなかった。

自分が妊娠していた2018年、NHKでドラマ化されることを知って、観てみたい気持ちが少し出ていたけど、「多分今この時期に観たら精神的にきついだろうな」と思って見送った。夫も気になっていたようだったけど、同じ理由でスルー。

実際視聴していた母親からは「すごく良いドラマだけど、今観たらしんどいことがたくさん出てくる」と言われた。

 

時は流れて2019年。

kindleのキャンペーンもあって、夫がコミックの既刊を揃えた。

夫が読むのを追うように読ませてもらって、1話目から号泣。

産みたいのに産めなかった人、産んだのに赤ちゃんを亡くしてしまった人。

産んで自分が命を落としてしまった人。

自分が育児に対して悩んだりうまく子供と向き合えなかったりするのがすごく小さなことだと思えるくらい、出産は奇跡なんだと知った。

 

 

夏にドラマが全話再放送されるのを知って「今なら観られる」と思って録画。

5話、7話が録画に失敗していて全話撮りきれなかったけど、録画できた分を先日やっと夫と観られた。

だいたい食事中に録画していた番組を観るのが常なんだけど、ながら視聴できる内容ではなかったので。

 

原作のエピソードを組み合わせたり、入れ替えたり、ドラマオリジナルの展開を入れながら物語は進んでいく。

こちらもまた1話から声を出して泣いてしまった。(原作と同じエピソード)

「命ってなに」は、不倫相手の子を妊娠した女性が出産後、自分の産んだ子を受け入れようとしていた矢先、亡くしてしまう。

「虐待されて亡くなったのかもしれない」とナースたちがいう中アオイ(ドラマの役名・原作中は作者名と同じ)は女性が愛情を持って授乳しようとする姿、添い乳をしたまま寝てしまう姿を想像する。

ここが、もう、ダメで…

自分が横になって子供に授乳する添い乳はドラマでも描写されていたように寝落ちて子供を窒息させる可能性があるということで私は一回もしていなかった。

疲れている中隣に子供がいて、何かあってもどうしようもできないという思いが強くて。

もう少し大きくなってからは一緒に昼寝したりもしていたんだけど、添い乳だけはなぜかする気にならなくて。

その事故で赤ちゃんが亡くなってしまうことも怖かったし、「興味がない」と言っていた女性が母性を感じて、相手に受け入れられなくても一人で育てていくと思えたのにそういう結末になったことがすごく衝撃だった。

容赦のない現実なんだな、というのを実感した。

 

ドラマならではの展開がされたのは4話の「産科危機」

1話から産院に通っていた女性が、出産で命を落としてしまう。

原作だとそれぞれのエピソードは独立しているからここはドラマで演出された展開。

1話から「明るい女性と、ドジだけど、相手をとても大切に思いやっているパートナー」として描かれていて、女性が亡くなってしまうことへの衝撃、パートナーの絶望がより伝わってくる。

4話の予告を観たときに「今までこの夫婦が出てきたのはこういうことか…!」と観る前から辛くなっていた。

4話自体は折れかけた陽介(夫)が、真知子(妻)の残したメモの幻覚を見て立ち直る、というエモーショナルな演出が入っていてそこは好みがわかれるかな、と思ったけど、ドラマ版の演出としてうまくできているなー、と思った(嗚咽しながら)

陽介はちょいちょいこの後も出てきて、最終話でやっと由比先生に「あの時はひどいことを言った」と言う事ができる。遺された子供と一緒に、きっとこれからも生きていける、大丈夫だ、と思えた。できることなら病院の壁面をまたきれいにしてくれますように。

 

原作を読んだときにはピンとこなかったのに、今観ることでいろいろと考えさせられたのは7話の「妊婦たちの不安」。これは看護師の望月さんも妊娠して、「妊娠中も仕事がしたい人」を2人登場させることで良いやりとりができたと思う。

更に「3人目を妊娠したけど、出産を諦めた人」のエピソードを入れることで妊娠している、出産できるのに無理をして仕事を続けることの傲慢さ(ともとれる視点)を描いている。

私は仕事をしたい、というよりも趣味を続けたいとか、一人で行動したい、といったことが諦められなくてそのことでずいぶん悩んだのを日記にも書いている。

そういった自由に動けなくなることへの不安とか、それでも子供を望んでいることとか、自分とリンクすることが多くてもう一回ゆっくり観返してみたい回になった。

あと、望月さんの旦那さんが基本的に空気読めない感じの人なんだけど、それでも望月さんのことを一番考えてくれて「3人で幸せになれれば大丈夫」って言ってくれたのが良かった。

 

10話「7日間の命」はもう、ずっと泣きっぱなしで大変だった。

ドラマ脚本がとても良かった。

母から娘へ。娘が亡くなってしまう息子を、すでに亡くなっている母に「そっちで息子をよろしくね」と託すシーン。

最後に「中絶せずに産んで、積極的治療をせずに自然に任せることは正しかったのか。自分の自己満足だったのではないか」と葛藤するのは、自分のことのように考えてしまってつらくなった。

今は無事に私も出産して、元気に1歳を迎えている。

もし妊娠中にこの話を観たら、もっと考え込んでもっと妊娠に対して不安になっていたのだろうな、と思う。

今も正解はわからないけど、「いつか」のために頭の片隅で考えておかなければいけないことなんだと思う。

この家族と陽介が関わりあるっていうのがドラマ的に良いんだよね。

それぞれがそれぞれを羨ましく思ってる。「出産して3人で過ごせる家族(ただし子供は7日で亡くなってしまう」と「出産時に妻を亡くしてしまった夫」。どちらも家族そろうことができなくなるけど、きっと悲しみの質は全く違う。

 

考えることがたくさんあって、読んだり観ると辛くなることがたくさん出てくる。

それでもこの話を知ることができて良かった。

無事に出産できたことに感謝して、我が子を大切に、家族で楽しく幸せに過ごして行こう、と思えた。

 

 

透明なゆりかご DVD-BOX

透明なゆりかご DVD-BOX

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2019/01/25
  • メディア: DVD
 

 観られてない話もあるし、勢いで円盤買おうとしたらDVDしかないってどういうことなの…