友達以上探偵未満/麻耶雄崇

勝てばホームズ。負ければワトソン。
この煽り、良すぎるでしょ…！

麻耶さんは「ホームズとワトソン」の物語が多くて、それぞれの関係性が好きな作品が多い。
いの一番に出てくるメルカトル鮎と美袋ペア、木更津悠也と香月実朝ペア。（この二人の本は図書館で読んでハマったら絶版・価格高騰なので非常につらい。電書化しませんかねマジ）
化石少女の２人の関係性はどちらがホームズでワトソンなのか、優位に立っているのはどちらか、と言った関係が最後まで読んで非常に面白かった。
貴族探偵は2巻がそれっぽい関係だけど、どちらも「名探偵」。
って言いながら麻耶さんの私のベストは名探偵とホームズではない「蛍」なんだけど…（最後の大崩壊がほんとすさまじいのでいろんな人に読んで欲しい）

それぞれの理由で名探偵を目指す高校生「もも」と「あお」が遭遇した殺人事件の謎を解くお話。
読者への挑戦状つき、素敵。
ももは自分の兄をワトソンにしようとして、あおはももをワトソンにしようとしているので、冒頭に挙げたあおりは正確ではないような気がするけど…
収録されている3編のうち、それぞれの視点から語られる「夏の合宿殺人事件」が最高でしたな。最初はももを見下していたあお。殺人事件に遭遇して右往左往しているももを、あおは推理力の差を見せつけて名探偵の座を諦めさせようとするのに、落胆するももを見たくなくて「ももの推理も惜しかった」と言いながら励まし、自分の推理を引き立てさせる「ワトソン」の座に立たせようとする…

あおはももが「欲しい」と思うのですよ。
その感情が結構大きくて…
この2人の関係をずっと見ていたいな、と思わせる。
百合探偵コンビ。素敵。

3人称で語られながらも基本的にももの視点に立って語られた前2編と、「夏の合宿殺人事件」前半。
そこからあおの視点が入ることで2人の関係が一気に魅力的になる。

今回も「名探偵とワトソン」いや「名探偵と名探偵」の関係がとても良い作品でした。
発売当時「百合小説」としてTLに流れてきたのも納得だわ…